土地を購入する際には「用途地域」を確認し希望の建物が建てられるかを確認しなければなりません。しかし国土の全域で「用途地域」が定められているわけではありません。街づくりや開発計画の基盤となる「都市計画」全体の仕組みを理解することが重要です。
都市計画の全体像
都市の計画的な整備をするために、国や都道府県が様々な法律を定めています。ルールを定めることで道路やライフラインの効率的な整備や、学校や公共施設などの乱立を防ぎ、良好な生活環境を保つことができます。周辺隣地間のトラブルの予防や美しい景観の創出にも必要不可欠です。都市計画は以下の構成で成り立っています。それぞれを確認しましょう。
参考)国土交通省 都市計画:都市計画制度の概要 資料をもとに作成
https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/toshi_city_plan_tk_000043.html
都市計画区域
都市計画は、原則として、「都市計画区域」内の土地について定められます。「都市計画区域」は街づくりをしていく区域として都道府県または国土交通大臣によって指定された、都市計画法が適応される区域です。住民のほとんどが都市計画区域内に居住しています。すべての都市計画区域について、街づくりの基本方針である「マスタープラン(都市計画区域の整備、開発および保全の方針)」が定められ、区域内を一体を都市として整備や開発がされます。
国土全体のうち「都市計画区域」として指定されなかった区域(都市計画区域外)については、原則として、都市計画法が適応されません。しかし将来的に街づくりをすることが見込まれる場所や制限を設けるべき地域をなどを「準都市計画区域」と指定し、一部のルールを定めることができます。例として観光地や高速道路のインターチェンジ周辺が指定されることがあり、無秩序な開発を抑制しています。
区域区分
都市計画区域をさらに3つの区域に線引き(区分)することができます。(一部の大都市圏では区域区分が義務付けられています。)
①市街化区域:すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
②市街化調整区域:市街化を抑制すべき区域とする。
③非線引き区域:①②以外の区域。
※都市計画法第7条 条文から一部抜粋
イメージとして、市街化区域は住宅街やお店が並ぶにぎやかな地域、市街化調整区域は田園地帯などの自然豊かでのどかな地域を想像すると分かりやすいです。
★土地探しの際に注意が必要なのは市街化調整区域
開発を抑制する地域であるため、住宅を含めた建築物の建築ができない場合や許可を受ける必要な場合があります。また、インフラが整備されておらず、予期せぬ費用が発生するケースがあるため、ハウスメーカーなどの土地と建物の専門知識を持った人に事前相談をしましょう。
地域地区
区域区分と同じく土地利用に関する計画で、更に細かい使い方や目的を定めて環境を保全するために「地域地区」が定められます。
①用途地域(基本的地域地区)…建物の用途や建蔽率、容積率などを制限するために定められる13種類の地域。市街化区域には13種類のいずれかが必ず定められ、市街化調整区域には原則として、用途地域を定めないものとされています。
・用途地域について
詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
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②補助的地域地区…用途地域による制限をベースに、より地域の特性を出すために定められる地区
例:高度地域、防火地域、風致地区
種類によって特定の用途地域内でしか定められないものや、準都市計画区域にも定められるものがあります。
都市施設・地区計画
都市施設
都市計画区域においては、区域区分や地域地区等で定めた計画にもとづいて生活に必要な施設を定めます。
・市街化区域、非線引き区域内には、道路や公園、下水道を必ず定める。
・住居系の用途地域内には、義務教育施設を必ず定める。
地区計画
区域区分や地域地区、都市施設よりもさらに細かい制限をするために市町村単位で定められる計画です。用途地域による制限などを緩和したり、さらに規制したりすることで、その地区独自の方針を定めることができます。建築物の制限はもちろん、緑地・樹木を保全するためのルールなどがあります。
まとめ
土地探しは様々な法規の確認が伴います。馴染みのない専門用語が多い中、十分な知識を持ってない人が独断で進めることはとても危険です。建築ができたしても将来の隣地トラブルに繋がる恐れもあります。「こんなはずじゃなかった。」を防ぐために有識者に相談しながら進めましょう。